昭和生まれの寿老人

チクリ、チクリと社会風刺を取り交ぜ是々非々を論じます。

父に歌った子守歌

 最近は父母の夢をよく見る。明治に生まれ80才
を超え30年前の平成3年に他界した父は、波乱万
丈な人生を送った。


そんな父が、老人介護施設の中で足を滑らせ大腿部
を骨折したと実兄から連絡があり、緊急入院した外
科病院に急いで行った。
連絡をくれた兄は、父の日用品、身の廻りの物等を
取りに帰った。
その僅かな時間の出来事であった。

手術が終わり痛々しい姿の父がベットに寝され病室に帰
ってきた。目を開けることなく顔色も悪い。
父の年を取ったシワシワの手をそっと握り、無言の時間
頭を過る事は、父にはあれや、これやと迷惑ばかりを掛
けた。それを思うと目頭が熱くなり涙が流れる。


幼い頃、父から、そして母から、よく聞かされた子守歌
それを父の耳元で静かに歌たった。
「ねんねんころりよ・・・・」
聞こえているのだろうか、父は私の手を強く握り、目を
開けることなく、その子守歌のとおり深く眠った。


そして、そのまま息絶え帰らぬ人となり、母の下へと逝ってしまった。
ほんの一時の出来事、魔訶不思議な事であった。


酒がこよなく好きで、将棋が大好きだった父。
今頃は先人と酒を酌み交わし、将棋に明け暮れる日々を送っているだろう。
先に逝った母と二人で仲良く、私たちを見守ってくれているだろう。